上司から「明日9時に現地集合でお願いします」が届きます。親指が勝手に1文字打って、勝手に送信を押します。
画面の右端に、緑の吹き出しで「り」。
取り消しに手を伸ばした瞬間、既読がつきます。
にんにくネコ1文字!たった1文字なのに!なんでこんなに空気が変わるの!?
「了解」から「り」までに何段あるのか、相手ごとにどこで止めるべきかを並べます。
省略の物差し|7段階を文字数で測る
丁寧さは気持ちではなく、長さで伝わります。身も蓋もない一次関数がここにあります。
了解系の返事・文字数スペクトラム
* 「了解」と「りょ」は同じ2文字。ここから先は長さではなく、崩し方が温度を決めています。
一番上の「承知いたしました」が一番重いのは、謙譲語と丁寧語が重なっているからです(仕組みは尊敬語・謙譲語・丁寧語の違いで)。
この物差しの厄介なところは、下に行くほど親しさと雑さが同時に増えることです。
相手が親しさとして受け取れば愛嬌、雑さとして受け取れば失礼になります。同じ1文字が、両方に転びます。
最下段の「既読のみ」だけは、性質が違います。0文字は省略ではなく返事をしていない状態です。
本人は「り」の代わりのつもりでも、相手の画面には返事が1つも存在しません。物差しの一番下に置いてありますが、実際には物差しから落ちています。
「了解は失礼」説はどこから来たのか
「了解」を目上に使うのは失礼で、「承知しました」が正しい。このルール、実は出典がはっきりしません。
国語辞典に「了解=目下に使う語」と定義されているわけでもなく、ビジネスマナー本やネット記事を通じて広まった比較的新しい説だと言われています。
一方の「りょ」「り」側にも、確定した発祥は残っていません。「了解」→「りょ」→「り」と、段階的に短くなっていったと言われています。
2019年には、10代女子を対象にした流行語・略語ランキング(Simeji調べ)で「り」が1位に選ばれたと報じられています。
大事なのは起源ではありません。相手の頭の中に、この物差しの何段目までが「許容」として入っているかです。そしてそれは、相手ごとに違います。
テティーベア『了解は失礼』の根拠を探しに行った人は、たいてい手ぶらで戻ってきます。ただ、根拠がなくても怒る人は実在します。厄介なのはそこですね
相手別・安全ライン早見表
「ここまでなら平気」の線を、相手ごとに引きます。
4列目が本体です。上司の欄が一番きついのは、崩す・崩さないをこちらが決められないからです。
相手が2文字にしてきても、それは招待状ではありません。上司にそのまま送れる文面は上司へのLINE返信 例文72本に、「了解」と「承知」の使い分けは職場で迷う言葉の使い分けにまとめてあります。
実演|取引先に「り」が着弾した夜
ここからLINEトーク画面を再現した会話です
取取引先ああなた右
8月2日(日)
取取引先
お世話になっております。お見積の件、金曜17時までにご提出をお願いできますでしょうか。
送信時刻22:40
取取引先
という返し方は、私にはまだ早かったようです。金曜17時、お待ちしております。
送信時刻22:45
LINEトーク画面の再現ここまで
先方は怒っていません。怒られるより、この方が効きます。
3分の沈黙が入っているのがポイントです。あの3分で、先方は返し方を選んでいます。
やってしまった後に必要なのは謝罪ではなく、上書きです。「り」の直後に1通だけ足します。
失礼しました、承知しました。
金曜17時までにご提出します。
これで事故は誤タップとして処理されます。3通目を送ると、そこからは言い訳になります。
逆方向の事故|友達に敬語を盛る
省略しすぎる事故ばかり語られますが、逆もあります。物差しの上に振り切れた側です。
ここからLINEトーク画面を再現した会話です
にんにくネコ
色の良いレモン右8月2日(日)

にんにくネコ
明日カラオケ行かない? 19時から!
送信時刻18:02

ご連絡いただき誠にありがとうございます。標記の件、謹んで承知つかまつりました。19時に参上いたします。何卒よろしくお願い申し上げます。
相手が既読送信時刻18:09

にんにくネコ
重い!!カラオケの返事から社印の匂いがする!!
送信時刻18:09

恐縮です。推敲に7分を要しました。
相手が既読送信時刻18:10

にんにくネコ
工数を申告しないで!!
送信時刻18:10
LINEトーク画面の再現ここまで
友達に丁寧すぎる返事を送ると、怒っているか距離を置きたいかのどちらかに読まれます。
回復が遅いのは実はこちら側です。省略しすぎは「雑だな」で終わりますが、盛りすぎは理由の推測が始まります。友達との温度は友達への返信サンプル集が目安になります。
崩し方の運用ルール|下げるのは1段ずつ、戻すのは一気に
安全ラインは固定ではありません。関係が変われば動きます。動かし方には順番があります。
下げるときは1段ずつ、相手が先に崩してから。「承知しました」で始めた相手が「了解です」を使い始めたら、こちらも「了解です」まで下ろせます。
2段飛ばして「了解」に行くと、崩したのではなく気が緩んだように見えます。
戻すときは段階を踏みません。やらかした直後、雲行きが怪しくなった日、相手が急に敬語に戻った日。この3つでは、一番上まで一気に戻します。
中途半端に1段だけ戻すと、様子をうかがっている感じのほうが伝わります。
判断に迷ったら基準は1つで足ります。その返事のスクリーンショットを、相手の上司に見られても平気か。平気なら送っていいラインです。
シーン別スタンプ使い分けTips
まとめ
- 了解系は7段。下に行くほど、親しさと雑さが同時に増えます
- 「了解は失礼」も「り」の起源も、はっきりした出典はありません。それでも怒る人は実在します
- 相手が先に崩すまで、こちらから崩さない。これだけで事故の大半は消えます
今日これだけ持ち帰るなら、上司の「了解」は招待状ではありません。相手が2文字でも、こちらは6文字のままでいてください。
「り」は1文字です。取り消すのに必要な言葉は、だいたい30文字くらいです。